Bi'laxsコラム
産後うつの原因とは?なりやすい人の特徴や対処法も
この記事では、産後うつの主な原因や発症しやすい人の特徴、なってしまったときの対処法を詳しく解説します。
産後うつは出産後の女性であれば誰でも発症するおそれがありますが、特に発症しやすい傾向がある人がいます。また、産後うつの原因はさまざまであり、原因に応じた対処が重要です。
この記事が、「産後うつになるのはなぜ?」や「自分も産後うつになるおそれはある?」などの不安の解消に役立つでしょう。
産後うつの対処法を知り、産後を健やかに過ごしたい人は、ぜひ最後までお読みください。
【この記事でわかること】
● そもそも産後うつとはなにか
● 産後うつの主な原因
● 産後うつを発症しやすい人の特徴
● 産後うつになってしまったときの対処法
そもそも産後うつとは?
産後うつとは、出産後の女性に生じるさまざまな心身の不調です。
日本産後ケア協会によると、「産後うつになるのは10人に1人程度」とされ、産後の女性には珍しくありません。
産後うつとはどのようなものなのかについて、以下のポイントを把握しておくことが大切です。
- 産後うつの主な症状
- マタニティブルーとの違い
上記2つのポイントをお伝えしていくので、産後うつの対策に役立てましょう。
※参考:産後のうつ傾向 24%に|一般社団法人 日本産後ケア協会
産後うつの主な症状
産後うつは、出産後の数週間から数ヶ月の間に生じるうつ病の1種です。
心身には、以下の症状が現れる場合があります。
身体症状 | 頭痛やめまい、不眠など |
精神症状 | 気分の落ち込みやイライラ、無力感、不安感など |
産後うつになると、乳児を「可愛い」と思えず、自分自身を強く責めてしまう人は少なくありません。
産後うつは放置すると、短期間で症状が悪化するケースが多く、自傷行為や自殺のリスクが高まります。そのため、産後の女性は心身の不調を感じたら、できるだけ早く医療機関の受診を検討しましょう。
必要に応じて専門家によるサポートや医療機関での治療を受けることをおすすめします。
マタニティブルーとの違い
マタニティブルーは、妊娠中や出産後に漠然とした不安を感じて気分が落ち込みやすくなります。症状が長引くことはなく、1~2週間ほどで自然と回復するケースがほとんどです。
一方、産後うつはうつ病の1種とされており、気分の落ち込みを始めとした症状が2週間以上続きます。
※参考:産後うつはいつまで続く?チェック方法やなりやすい人の特徴|BELTA
産後うつの主な原因
産後うつはさまざまな原因で引き起こされ、なかには複数の原因が該当する人もいます。主な原因は以下の通りです。
- 母親としてのプレッシャーや不安
- 周囲からのストレス
- ホルモンの急激な変化
- 睡眠不足
- 疲労の蓄積
上記5つの原因を解説するので、産後うつの予防・対策につなげましょう。
母親としてのプレッシャーや不安
出産後の女性は、”母親”という新しいアイデンティティを獲得します。
しかし、新たなアイデンティティに慣れるまでは、周囲から”母親”として見られることにプレッシャーや不安を感じるでしょう。
「母親として家族の期待に応えなければならない」や「母親だから子供を守らなければならない」と多大なストレスを感じやすくなります。
周囲の些細な言葉や視線が過剰に気になり、精神的に疲れてしまう人は少なくありません。
周囲からのストレス
出産後の女性は乳児のお世話中心の生活に切り替わります。
しかし、夫や親などの身近な人に生活のペースを乱されたり、配慮に欠けた言葉をかけられたりすると、強いストレスを感じるでしょう。
生活の変化に対する戸惑いや疲労感、ストレスなどの悩みを打ち明けた際に家族が気持ちに寄り添ってくれなければ、自分自身を責めてしまう女性は少なくありません。
ホルモンの急激な変化
産後の女性は、女性ホルモンである”エストロゲン(卵胞ホルモン)”や”プロゲステロン(黄体ホルモン)”の分泌量が、急激に減少します。
また、授乳時は射乳ホルモンといわれる”オキシトシン”が多量に分泌されるなど、ホルモンバランスの変化を感じるでしょう。
ホルモンバランスの急激な変化が生じると、脳や身体はすぐに受け入れられません。自律神経のバランスが崩れやすくなり、不安や落ち込みなどの症状が現れます。
睡眠不足
生後3ヶ月ごろまでは、昼夜を問わず2~3時間おきに授乳をする必要があります。
また、授乳後に吐き戻したミルクで汚れた衣類の着替えやおむつ交換など、他の作業も行わなければなりません。そのため、産後の女性は夜間の睡眠が細切れになり、慢性的な睡眠不足を感じやすいといえます。
肉体的な疲労は精神的な不調を悪化させるため、産後うつの引き金となるでしょう。
疲労の蓄積
育児中は常に我が子にかかりきりになるため、「なかなか休息をとれない」や「ゆっくり過ごせない」と感じる人は少なくありません。
また、出産前まで楽しんでいた趣味の時間を確保できないことも、ストレスにつながります。
産後はひとりで育児の辛さを抱え込むのではなく、周囲に頼って休息時間を得ることも大切です。
産後うつを発症しやすい人の特徴
産後うつは産後の女性であれば誰もが発症するおそれがあります。特に発症しやすい人には、以下の特徴があります。
- 過去にうつ病などにかかった経験がある
- ストレスを抱え込みがちである
- 真面目で責任感が強い
- 完璧主義である
- 周囲との関係がうまくいっていない
上記5つの特徴を解説するので、当てはまるものはあるかチェックしてみましょう。
過去にうつ病などにかかった経験がある
妊娠前にうつ病にかかった経験や月経前症候群(PMS)に悩まされていた経験がある人は、産後うつになりやすいとされています。
うつ病の既往がある人はストレスへの耐性が低く、ストレスを上手に処理することが苦手な人が多い傾向があります。また、出産・育児に伴うストレスに対処しきれず、物事や周囲の言動をネガティブに捉えがちにもなります。
また、月経前症候群はホルモンバランスの変動によって、生理前にさまざまな不調が生じます。
妊娠・出産に伴うホルモンバランスの変動による影響を受けやすいでしょう。
※参考:【チェックリスト有り】産後うつになりやすい人の特徴と治療方法の紹介|社会医療法人 博友会
ストレスを抱え込みがちである
上手にストレスを発散できずひとりで抱え込んでしまう人は、心身の不調を招きやすくなるため産後は特に注意しましょう。
妊娠・出産を経ると、ホルモンバランスの変動や生活環境の変化などのストレス要因が増えます。
ひとりでストレスを抱え込まないように、夫や家族に育児を頼みストレス発散のための時間を設けることが大切です。
真面目で責任感が強い
真面目で責任感が強い人は、仕事や家事などに一生懸命取り組もうとします。
そのため、出産後は「母親の自分がしっかり育児をしなければならない」という思いから、育児の負担をひとりで抱えてしまいがちです。
また、想定通りに家事や育児が行えないと、必要以上に自分を責めてしまう場合があります。
理想と現実の自分の姿のギャップに自信をなくしてしまう人は少なくありません。
周囲に任せられることは頼み、自身の心身の健康を優先させましょう。
完璧主義である
乳児の睡眠時間や授乳量には個人差があるので、マニュアル通りにはいきません。発達や成長の速度も乳児によって異なります。
しかし、完璧主義の人は育児本やマニュアル通りに育児をこなそうとして、ストレスを感じてしまう場合があります。
何事も完璧にこなさなければ気が済まない人は、あえて適度に手を抜くことや、周囲のサポートを得るなどしてストレスを軽減させましょう。
周囲との関係がうまくいっていない
気軽に頼れる人が身近にいない人は、心細さや不安を感じやすい傾向にあります。
また、家族関係や親族関係でトラブルがあると、「里帰りができない」や「産後の手伝いを頼めない」などの悩みが増え、産後の生活にも支障をきたします。
ゆっくり休息をとれないうえ、育児による負担やストレスがかかるでしょう。
友人と比べて自分に頼れる人がいないことに落ち込んでしまう人は珍しくありません。ベビーシッターや家事代行サービス、ファミリーサポートなどのサービスの利用がおすすめです。
まるで友人のように接して欲しい場合は同年代の人に、安心感を得たい場合は親世代の人に依頼すると良いでしょう。
産後うつになってしまったときの対処法
産後うつによるさまざまな症状は、母親や乳児の健康的な生活を妨げます。適切な対処法を取り入れて、産後うつの症状や苦痛を和らげましょう。
産後うつになってしまったときの対処法は以下の通りです。
- 生活習慣を見直す
- ひとりで好きなことができる時間を作る
- 家事を完璧にこなさない
- 疲れを感じたら休息をとる
- 周囲に助けを求められる環境を作る
- 症状がひどいと感じたら医療機関・専門家に相談する
上記6つの対処法を解説するので、日常生活に取り入れることを検討しましょう。
生活習慣を見直す
子供が小さいうちは子供の生活リズムに合わせて生活するため、規則正しい生活を送るのが困難です。また、産後うつで心身の不調を抱えていると、生活リズムが乱れがちです。
生活習慣が乱れていると気持ちが塞ぎやすくなるため、健康的な生活のために以下のことを意識してみましょう。
- 起床後はカーテンを開けて日光を浴びる
- 調子が良い日は散歩に出掛けて身体を動かす
- 栄養バランスの整った食事を摂る
- ゆったりと入浴する時間を設ける
気分転換にもつながるので、周囲のサポートを得ながら生活習慣を見直すことが大切です。
ひとりで好きなことができる時間を作る
育児にかかりきりの生活を送っていると、気持ちに余裕を持てなくなります。そのため、夫や家族に子供のお世話を頼んで、ひとりで好きなことができる時間を作りましょう。
周囲に頼めない場合、ベビーシッターや一時保育の利用がおすすめです。子供を預けることに申し訳なさを感じる必要はありません。
短時間でも、散歩を楽しんだりカフェでのんびり過ごしたりするだけで、気分がリフレッシュするでしょう。
家事を完璧にこなさない
家事を完璧にこなそうとすると、育児や心身の不調で思い通りにできなかった際に、自分を責めてしまいがちです。
家事の優先順位を決め、優先順位が高い順から取り掛かることをおすすめします。こだわりたい部分をしっかり行えるので、手を抜きながら生活の満足度が下がることを防げます。
また、家事負担を減らすアイテムを積極的に活用することも選択肢の1つです。
- お掃除ロボットや食器洗い乾燥機、乾燥器付き洗濯機を導入する
- ミールキットや冷凍の弁当を定期購入する
- 食料品や日用品の買い物はインターネットスーパーを利用する
そのほかにも、家事代行サービスやファミリーサポートなどを利用して、家事の負担を減らしましょう。
疲れを感じたら休息をとる
心のコンディションを整えるために、休息は欠かせません。授乳や夜泣きでまとまった睡眠を確保できない人や気持ちが落ち着かず上手く眠れない人もいます。
リラックスしながら横になっているだけでも、十分な休息になります。好きな香りのアロマを焚くと不安感や焦りが和らぐので、気持ちが落ちこんでいるときは取り入れてみましょう。
周囲に助けを求められる環境を作る
育児中は外出の機会が少なく、周囲の人とコミュニケーションを取る時間が持てません。
ひとりで抱え込んでいると、ネガティブな考えばかり頭をよぎってしまいます。
周囲に助けを求められるような、環境作りの調整が大切です。夫婦でその日のできごとを話し合うなど、普段から気持ちを伝えるように努めてみましょう。
また、気軽に相談できる相手が周囲にいなければ、子育て支援センターやホットラインの活用もおすすめです。
症状がひどいと感じたら医療機関・専門家に相談する
産後うつは、休息や環境の調整などで時間をかけながら、ゆっくりと症状を緩和できます。
しかし、症状がひどい場合では、薬物療法や精神療法といった治療が必要です。授乳中の人は薬物療法に抵抗を感じることも少なくありませんが、抗うつ薬のなかには母乳に影響を及ぼさないものもあります。
また、抗うつ薬や精神安定剤といった薬剤は服用したくない人は、効果がマイルドな漢方薬の処方を提案してもらえるでしょう。
子供の健やかな成長に影響が及ばないためにも、医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。
産後うつに関するよくある質問
最後に、産後うつに関するよくある質問を紹介します。
- 夫が産後うつになる原因は?
- 産後うつは必ず治る?
- 産後うつが子供に影響を与えるって本当?
上記3つの質問に詳しくお答えするので、疑問の解消にお役立てください。
夫が産後うつになる原因は?
「産後うつは女性が発症する」というイメージがありますが、近年では男性も産後うつを発症することがわかっています。
男性が産後うつを発症する主な原因は以下の通りです。
- 育児中の男性へのケアや支援が少ない
- 周囲に相談しにくい
- 妻も産後うつの傾向があり、育児・家事の負担がかかっている
- 出産後の生活の変化に対する戸惑い・ストレス
- 仕事や育児のプレッシャー
特に、「積極的に育児に参加したいけれど仕事が忙しい」場合や、「育児のために定時で退勤したいが困難である」場合など、育児と仕事の板挟みに悩む男性は少なくありません。
夫に産後うつの症状が見られたら、育児時間について夫婦で話し合いましょう。
※参考:父親の産後うつ パパだって、つらいんです|NHK 政治マガジン
産後うつは必ず治る?
産後うつは治療すれば治ります。
ただし、産後うつは症状の程度が人によって異なるため、治療にかかる期間は個人差があります。なかには、症状が落ち着くまで1年以上かかる人も珍しくありません。
適切な治療や環境の調整で次第に症状が経過するケースがほとんどであるため、ゆっくりと治療しましょう。
産後うつが子供に影響を与えるって本当?
気持ちに余裕を持ちにくいため、子供に上手く愛情を伝えられず、不安に感じてしまう人は多くいます。
産後うつは、出産後の女性であれば誰でも発症するおそれがあり、子供への愛情不足が原因ではありません。ただし、産後うつに陥ると、心身の不調から子供の世話が行き届かなくなる場合があります。
日常生活に影響を及ぼすことがないように、症状が悪化する前の対処や医療機関での治療を検討しましょう。
産後うつの原因と対処法を理解して乗り越えよう
マタニティブルーとは異なり、産後うつは2週間以上にわたって心身の不調が続くうつ病の1種です。
産後であれば誰でも発症するおそれがあるものの、真面目で責任感の強い人や完璧主義の人などは発症リスクが高いため、特に注意する必要があります。
もし自覚症状があれば、早めに休息を取ったり周囲のサポートを求めたりすることが重要です。
また、症状がひどい場合は、医療機関で適切な治療を受けるのも選択肢の1つです。前向きに育児に取り組めるように、適切な対処法を取り入れて産後うつを乗り越えましょう。