Bi'laxsコラム
妊娠したら仕事はいつまで?法律や制度・手当について解説
この記事では、妊娠・出産時に妊婦を守る法律・制度や、収入を助ける手当一覧などを詳しく解説していきます。
この記事を最後まで読み終えていただけたら、妊娠していても仕事ができる時期が分かり、自分に合った働き方も把握できるでしょう。
妊娠後も仕事を安心して続けたい人は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
● 妊娠したら仕事はいつまで?
● 妊娠・出産時に妊婦を守る法律や制度
● 妊娠・出産の収入を助ける手当一覧
● 妊娠中の働き方を例で紹介
妊娠したら仕事はいつまで?
妊娠発覚後も、できるだけ仕事を続けたい女性は少なくありません。ここでは、妊娠と仕事に関する以下の項目を解説します。
- 妊娠したら何ヶ月まで働けるのか
- 早めに産休へ入ることはできるのか
順番に見ていきましょう。
妊娠したら何ヶ月まで働けるのか
妊娠している女性が仕事をできる期間は、労働基準法によって定められています。原則として妊娠している女性は、出産予定日の6週間前にあたる、妊娠34週から産前休暇を請求可能です。
双子以上の多胎妊娠の場合、出産予定日の14週前にあたる、妊娠26週と産前休暇のタイミングが早まります。
正社員でなくとも取得可能であり、派遣社員やアルバイトなど、産前休暇の取得に勤務形態に関係ありません。
早めに産休へ入ることはできるのか
産前休暇の取得を希望しなければ出産ギリギリまで働けますが、早めに産休には入れません。
ただし、切迫流産・早産や妊娠高血圧といった体調の問題では、医師が長期安静が必要だと判断した場合に病気休暇の取得が可能です。
病気休暇を取得したまま、出産予定日の6週間前に突入すると産前休暇に切り替えられます。
特に、双子以上の多胎や妊婦が高齢といったハイリスク妊娠では、管理入院を余儀なくされるケースが多くあります。
体調面に不安を抱えており、産休よりも早めに仕事を休みたい人は、かかりつけの医師に相談しましょう。
妊娠・出産時に妊婦を守る法律や制度
妊娠中の働く女性は、様々な法律や制度によって守られています。妊娠・出産時に、妊婦を守る法律や制度は以下の通りです。
- 男女雇用機会均等法
- 労働基準法
上記2つの法律・制度について解説していくので、確認してみましょう。
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法では、以下の内容を定めています。
妊婦健診や保健指導を受ける時間の確保 | 希望すれば勤務時間の中で妊婦健診や保健指導を受けるのに必要な時間を確保できる |
妊娠中の通勤緩和 | 通勤緩和の指導について医師より指導があった場合、時差勤務や勤務時間の短縮といった措置を受けられる |
妊娠中の休憩の延長・回数の増加・時間帯の変更など | 休憩時間について医師より指導があった場合、適切な措置を受けられる |
作業の制限や勤務時間の短縮、休業 | 医師より、身体に負担のかかる作業の軽減や変更、妊娠悪阻や切迫流産などで休業を指導された場合、必要な措置を受けられる |
交通機関の混雑や長時間の労働は、つわりの悪化や切迫流産・早産につながるおそれがあります。妊娠中は体調が変化しやすいので、不安なことがあれば産婦人科医に相談すると安心です。
労働基準法
労働基準法では、妊娠している女性が安心して働けるように、環境の調整について定められています。
- 産前・産後休暇の取得
- 妊娠中に危険な業務や有害な業務に就くのは禁止
- 時間外や休日の労働、深夜業(22時~翌5時)の免除
特に、本人が請求して医師が認めた場合、産後6週間を経過したら就業できますが、原則として出産翌日から8週間は就業できません。
妊娠・出産の収入を助ける手当一覧
妊娠・出産を機会に勤務時間が短縮したり、休業が増えたりすることで、収入は減額することとなります。そこで、妊娠・出産する女性向けの手当の利用を検討してみましょう。
妊娠・出産の収入を助ける手当一覧は、以下の通りです。
- 出産手当金
- 出産育児一時金・家族出産育児一時金
- 産前産後休業期間中の保険料免除
上記3つの手当について詳しく解説していきます。
※参考1:出産でもらえる手当金について【お金編】|ユニ・チャーム
※参考2:ワールド健康保険組合ホームページ
※参考3:【産休・育休・妊娠したらもらえるお金一覧】出産手当金・出産育児一時金・育児休業給付金や助成金はいくらもらえるの?|もしものはなし|楽天保険の総合窓口
出産手当金
出産手当は、働く女性の産休期間(産前42日・産後56日、多胎の場合は98日)の給与を保障する手当です。標準報酬月額の3分の2を受け取れます。
予定日より早く出産すると、受け取れる総額が減ってしまい、逆に予定日より遅れて出産すると、42日分より多く受け取れてお得です。
出産手当の請求用紙は、産休に入る際に会社から受け取れます。出産した病院の照明が必要となるので、入院時に請求用紙を持っていきましょう。
出産育児一時金・家族出産育児一時金
出産育児一時金・家族出産育児一時金とは、出産にあたって健康保険から支払われる手当です。
出産費用の相場は50万円程とされており、出産育児一時金・家族出産育児一時金が支払われることで、自己負担額を大幅に減らせます。
ここでは、支払われる金額を一覧表にまとめたので確認してみましょう。
手当 | 支給条件 | 支給金額 |
出産育児一時金 | 被扶養者本人が妊娠4ヶ月(85日)以降に出産した時(死産や流産でも可) | 原則として、子ども一人につき50万円(※1)
双子の場合は84万円 |
● 在胎週数が22週未満であった場合
● 産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合 |
原則として、子ども一人につき48万8,000円(※2) | |
家族出産育児一時金 | 被扶養者である配偶者や家族が出産した時 | 出産育児一時金と同額 |
※1:令和5年4月1日以降に出産した場合(令和5年3月31日まで:42万円)
※2:令和5年4月1日以降に出産した場合(令和5年3月31日まで:40万8,000円)
出産育児一時金・家族出産育児一時金の受給対象は、健康保険の被保険者や被扶養者、国民健康保険の被保険者です。
支給条件に当てはまれば、死産や人工妊娠中絶であっても支給対象となります。支払われる方法は、以下の3種類です。
産後申請方式 | ● 出産費用は医療機関に全額支払った後で、加入している健康保険組合などに請求する
● 一時的に出産費用を全額自己負担しなければならない |
直接支払制度 | ● 医療機関で事前に手続きしておけば、手当が医療機関に直接支払われるので、差額分のみ自己負担する
● 多くの医療機関で導入している |
受取代理制度 | ● 出産する医療機関を手当の受取代理人として、健康保険組合などに申請する
● 直接支払い制度と同じく、差額分のみ支払う ● 直接支払制度を導入していない小規模な医療機関で導入されている |
多くの医療機関で「直接支払い制度」や「受取代理制度」の導入が進んでいます。退院時にまとまった金額を用意する必要がないので、安心して会計を済ませられるでしょう。
ただし、対応していない医療機関もあるので、出産予定の医療機関に確認しておくと安心です。
産前産後休業期間中の保険料免除
産前・産後を通じて、以下のような保険料の免除が受けられます。
産休中の社会保険料 | ● 産休中は健康保険料・厚生年金保険料の支払いが免除
● 産休開始日の前の月~終了予定日翌日の前の月 |
育休中の社会保険料 | ● 育休中の健康保険料・厚生年金保険料の支払いが免除
● 育休開始日の月~終了予定日翌日の前の月 |
国民年金保険料 | ● 出産予定日または出産月の前日から4ヶ月は保険料の支払いが免除 |
免除期間中であっても、被保険者としての資格はそのままで、納付した期間として認められます。
産前・産後休暇中に手当を取得できるものの、収入の減額が見込まれるので、保険料の免除は嬉しい制度といえるでしょう。
妊娠中の働き方を事例で紹介
妊娠している女性が働いていると、どのような問題を抱えることになるのか気になるところです。そこで、妊娠中の働き方について以下の事例で紹介していきます。
- つわりで通勤ラッシュがきつい
- 夜勤を免除してほしい
- 切迫流産と診断を受けた
各事例の内容を把握して、妊娠中の働き方に活かしましょう。
つわりで通勤ラッシュがきつい
【事例1】
妊娠前までは電車内が混雑する時間帯に通勤していた。妊娠後は混雑する電車に乗っていたら気分が悪くなり、途中の駅で下りて休んでから出勤している。 休んでいてもなかなか体調が戻らず、遅刻してしまう日も増え、毎朝通勤するのがつらい。 |
妊娠初期はつわりの症状が出やすく、日常生活にさまざまな支障をきたします。
特に、通勤ラッシュによって混雑した電車やバスでは座ることが難しく、長時間立ちっぱなしにならなければならないケースも少なくありません。
ストレスや疲労などによって、つわりの症状が悪化してしまう人もいます。
仮に通勤ラッシュでつわりがひどくなるようであれば、妊婦健診の際にかかりつけの産婦人科医に相談するのがおすすめです。医師に通勤時間の変更や勤務時間の短縮といった指導を受けたら、「母性健康管理指導事項連絡カード」を書いてもらいましょう。
職場に報告すると適切な措置を受けられるので、無理なく通勤を続けやすくなります。
夜勤を免除してほしい
【事例2】
妊娠前は夜勤をしていたが、妊娠してから眠りつわり(※)や身体のだるさを感じるようになった。不規則な生活による睡眠不足も重なり、毎日仕事に集中できない。 しっかり身体を休めたいので、夜勤を免除してほしい。 |
※日中や仕事中などにおいても、強烈な眠気が襲ってくるつわりのこと
夜勤勤務の女性が多い職業のひとつとして、看護師が挙げられます。
職場の人員が不足しているので中々言い出しにくいといった人もいますが、妊娠中の身体は思っている以上にデリケートです。
集中力が途切れやすくなったり、異常な眠気を感じたりする場合があるので、妊娠中の夜勤は身体に大きな負担がかかります。
妊娠中の女性は深夜業の免除を申請できるので、妊娠が分かったら早めに申請すると良いでしょう。妊娠中の働く女性が申告した場合、職場は夜勤の免除が義務付けられています。
切迫流産と診断を受けた
【事例3】
妊娠発覚後もこれまで通り仕事していたら、不正出血してしまい、かかりつけの産婦人科で「切迫流産」と診断されてしまった。医師から「安静に過ごすように」と診断書を受け取ったのだが、いつまで安静に過ごせばよいのか、仕事はどうすればよいのか悩んでいる。 出産に向けて出費も増えるので、休んでいる間の金銭面も心配である。 |
医師から切迫流産の診断を受け、休業の必要がある場合は、速やかに職場に伝えて休業を申請しましょう。引き継ぎの必要があれば電話やメールで対応し、しっかり身体を休めることが大切です。職場に復帰するタイミングは、医師の許可が下りてからとなります。
また、勤務先で健康保険(加入者保険)に加入している場合、傷病手当の支給対象となります。
支給開始以前の継続した12ヶ月間における平均標準報酬月額の2/3が支給されるので、休職中も安心です。ただし、自営業や被保険者に扶養されている人は対象外となるので注意しましょう。
妊娠と仕事に関するよくある質問
最後に、妊娠と仕事に関するよくある質問を紹介します。
- 妊娠初期に仕事を休むのは甘えですか?
- 妊娠初期に重いものを持っても大丈夫ですか?
- 妊娠初期の仕事中に腹圧をかけてしまったらどうすればいいですか?
上記3つの質問について詳しく回答していくので、疑問の解消に役立てましょう。
妊娠初期に仕事を休むのは甘えですか?
妊娠初期に仕事を休んでしまうのは、決して甘えではありません。母体も胎児も不安定な状態のため、自分自身の身体や健康を優先させてください。
多くの妊娠初期の女性には、吐き気や嘔吐、頭痛、異常な眠気といった様々なつわりの症状が現れます。つわりの症状が辛くて、起き上がるのが難しい日もあるでしょう。
無理して出勤しても体調を崩してしまう原因となるので、思いきって仕事を休んでしまうのもひとつの手段です。
また、医師から切迫流産と診断された場合、流産のリスクがあるので、安静に過ごす必要があります。医師の許可が下りるまでは休職し、身体を休めましょう。
妊娠初期に重いものを持っても大丈夫ですか?
妊娠初期に重いものをもつ仕事は、お腹に負担がかかりやすいので避けてください。
流産だけでなく、転倒の危険性もあります。特に、介護職や保育士など、力仕事の多い職業に就いている場合、他の職員に代わってもらいましょう。
妊娠中の女性に負担のかかる作業の軽減や変更は、男女雇用機会均等法でも定められています。
ただし、「申し出たけれど他の職員に代わってもらえない」「職場に申し出を拒否された」といった場合は、かかりつけの産婦人科医に「母性健康管理指導事項連絡カード」を書いてもら
うことがおすすめです。
母性健康管理指導事項連絡カードによって、医師の指導を受けた事業主は、適切な措置を講じなければなりません。無理して、身体に負担のかかる作業を続けないようにしましょう。
妊娠初期の仕事中に腹圧をかけてしまったらどうすればいいですか?
妊娠初期に腹圧をかけてしまったからといって、すぐに流産するわけではありません。不正出血や下腹部痛など、体調に変化がなければ大きな心配はないでしょう。
ただし、体調に変化があったり、どうしても不安に感じたりした際は、かかりつけの産婦人科を受診すると安心です。
妊娠中の仕事は無理せずに自分を大切にしよう
妊娠している女性は産前6週間から休暇を取得でき、希望すれば出産ギリギリまで働けます。
男女雇用機会均等法や労働基準法によって、妊婦が働きやすい労働環境を整えることも定められているので安心です。
また、出産手当金や出産育児一時金といった手当も充実しているので、収入を大きく減らさずに済みます。
働いている妊娠中の女性は、自分の身体やお腹の赤ちゃんを最優先し大切にしましょう。